150年以上続く世界最長の科学実験
1871年、スコットランドのグラス号大学で始まった科学実験がいまだ続いています。この実験は、19世紀を代表する天才科学者ケルビン卿が始めた「拡散実験」で、液体の拡散現象を観察するものです。
天才科学者ケルビン卿の実験
ケルビン卿は10歳で大学に入学し、22歳でグラス号大学の教授に就任するなど、非常に早熟な人物でした。彼は絶対温度の単位「ケルビン」の命名者としても知られています。
ケルビン卿は、この拡散実験を始めた当初は自ら監視していましたが、後に記録を残さなくなりました。そのため、その後の経緯は不明瞭になっていきました。
150年後の驚くべき発見
1968年、グラスゴー大学の改築工事で実験装置が偶然発見されました。それは天井まで届く2本の巨大なガラス容器で、液体の拡散が今なお続いているという驚くべき状況でした。
さらに2009年には、この実験装置が再発見されました。ケルビン卿は、この実験が数千年あるいは1万年続くと予測していたことが明らかになったのです。
拡散とは何か
拡散とは、物質が濃度の高いところから低いところへ自然に広がっていく現象です。この拡散の速度は、距離の二乗に反比例するという法則があります。
小さな世界では拡散は数秒で完了しますが、大きな世界では数千年もかかるのです。ケルビン卿はこの拡散の遅さに着目し、この実験を始めたのだと考えられます。
世界最長の継続実験
このケルビン卿の実験は、世界最長の継続科学実験の可能性があります。しかし、誰も実験を監視しておらず、測定データも残されていないため、ギネス世界記録にも登録されていません。
一方で、別の長期実験であるピッチドロップ実験はギネス記録に認定されています。ケルビン卿の実験は、科学の歴史に残る重要な実験であるにもかかわらず、その価値が十分に評価されていないのが現状です。
未来への挑戦
ケルビン卿の実験は、今なお進行中で、154年間で約30-50cmの拡散が推定されています。この驚くべき遅さは、拡散現象を理解する上で非常に重要なデータを提供しています。
今後、この実験が継続され、さらなる発見や科学的知見が得られることが期待されます。ケルビン卿の意図した「学生への教育」と「世代を超えて受け継がれるプロジェクト」の理念が、150年以上の時を経て実現しつつあるのかもしれません。
まとめ
1871年に始まった「ケルビン卿の拡散実験」は、今なお150年以上継続している世界最長の科学実験です。天才科学者ケルビン卿が予測した通り、この実験は数千年あるいは1万年続くと考えられています。
拡散現象の遅さを観察することが実験の目的で、小さな世界と大きな世界の違いを示す重要な実験データを提供しています。この実験は、科学の歴史に残る意義深いプロジェクトといえるでしょう。


