ついに到来した「大インフレ時代」の真相

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チャンネル名:VAIENCE BUSINESS
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公開日:2025年11月29日
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「インフレ」とは何か

インフレーションとは、物やサービスの価格が持続的に上昇する現象です。その背景にあるのは、需要と供給のバランスの変化です。需要が供給を上回れば価格は上昇し、需要が供給を下回れば価格は下落します。

インフレには大きく2つのタイプがあります。需要プルインフレは景気が良い時に起こりやすく、消費者の旺盛な需要が価格を押し上げる現象です。一方、コストプッシュインフレは原材料や人件費の上昇により企業が価格を引き上げざるを得なくなる状況で、経済にとって厄介な存在です。

インフレの指標には、消費者物価指数と企業物価指数があります。企業物価の上昇が消費者物価に波及することが多く、日本では企業物価指数が消費者物価指数を上回って推移しており、今後の物価上昇が示唆されています。

世界的な「大インフレ」の背景

世界経済は、コロナ禍を境に劇的な変化を遂げました。世界のインフレ率は2019年の3.6%から2022年には8.7%まで急上昇し、その後2025年には4.2%まで低下する見通しですが、21世紀としては高い水準です。

この背景には、パンデミック対応としての各国の金融緩和政策があります。FRBは政策金利をゼロ金利まで引き下げ、量的緩和により9兆ドル規模の資金を市場に供給。政府による現金給付もインフレを後押ししました。

同時に、サプライチェーンの混乱や労働市場の逼迫により、企業が賃金を大幅に引き上げざるを得なくなり、この人件費上昇が物価を押し上げる構造となっています。さらに、ウクライナ戦争によって小麦やエネルギー価格が急騰し、グローバル化からナショナリズムへの転換が加速し、今後も物価上昇圧力が続くとみられています。

日本経済の「デフレからインフレへ」の転換

長らくデフレに苦しんできた日本経済にも、ついにインフレの波が到達しています。消費者物価上昇率は2019年の0.5%から2021年の-0.2%に低下した後、2025年には3.3%まで上昇する見通しです。

特に注目すべきは企業物価上昇率です。2022年には9.8%と爆発的に上昇し、2025年3月時点でも4.3%と高止まりしています。これは消費者物価上昇率を上回るペースであり、企業が抱えるコスト圧力が消費者に完全に転嫁されていないことを示しています。

一方、日本銀行の調査では、消費者が実感する物価上昇率は10%から15%にも達しています。これは、日々の生活で購入する食品や日用品の価格上昇率が、全体平均を大きく上回っているためです。

資産インフレが進行

大量のマネー供給により、実態経済よりも金融市場に資金が流れ込み、深刻な資産インフレを引き起こしています。

日経平均株価は2019年末から2025年10月にかけて120%も上昇。全国の住宅価格指数も2019年末から2025年7月までに26%上昇し、東京都では40%も急騰しました。さらに金価格も2019年から200%上昇しています。

この結果、2019年末から100万円を現金で保有し続けていた場合、不動産に対する実質購買力は79万円分に、株式に対しては45万円分に、金に対しては33万円分にまで減少してしまいました。

インフレに直面した投資家は、通貨の価値が下落し続けるため、現金以外の資産にシフトしていく傾向にあります。

新たな経済パラダイムへの移行

この「大インフレ」は、単なる景気変動ではなく、長く続いた低インフレの時代が終わり、新たな経済パラダイムへの移行を示しています。

コロナ禍やウクライナ戦争、各国の金融政策など、複雑に絡み合う要因が、需給バランスを大きく変化させ、持続的な物価上昇を引き起こしています。これに加えて、資産インフレの進行により、現金保有では資産価値が大きく目減りする事態となっています。

今後、企業は賃金や原材料価格の上昇を消費者に転嫁せざるを得ず、さらなる物価上昇が予想されます。一方で、投資家は通貨の価値下落に備え、不動産や株式、金といった実物資産にシフトしていくことが求められます。

この大転換期に、私たちはどのように対応し、新しい経済パラダイムの中で生き残っていくべきか、しっかりと考える必要があるでしょう。

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